====== ドリキャス発売20周年なのでスクールネットエクスペリメンタルについて書いてみる ====== 今日はセガの最後にして愛すべき家庭用ゲーム機、Dreamcastの発売20周年記念日だそうだ。ちょうどいい機会なので、いつか書こう思いつつ手付かずだった「スクールネット・エクスペリメンタル」について書いてみようと思う。 まず初めに。 \\ **このソフトを持ってる人、店売りで値段付かなかったからって処分しちゃ駄目だよ!** \\ **極めて貴重なソフト**なので後生大事にするか、しかるべき人に譲渡してください。 スクールネット・エクスペリメンタルとは、2000年に実施された「ドリームキャストとインターネットで家庭と学校を繋ぐ」という趣旨の実証実験および、同実験用のドリキャスソフトのことである。実験には全国10校の小・中学校が参加したらしい。ソフトは各校ごとの専用品となっており、すなわち10バージョンが存在する。ドリキャス界隈では、まさに知る人ぞ知る幻のソフトとして、その名を見ることができる。 インターネット上には数えるほどしか情報がなく、レアすぎて価値がつかない代物でもある。この記事によってソフトの価値が暴騰するのは本意ではないが、このままでは失われた歴史になりかねない。よって、幸運にも実験に参加出来た者として、いちゲーマーとして、そしていちゲーム開発者として、当時のことを記したい。 うちの中学校でスクールネット・エクスペリメンタルが実施されたのは、確か2000年のことである。記憶が大分曖昧で2001年だったような気もするが、現存するネット記事を信じるなら2000年のようだ。DC版サクラ大戦(2000年5月25日発売)を先んじて予約購入し、ドリキャスが来る日を待ち望んでいたのは鮮明に覚えている。実のところ、自分は既に進学しており、まだ中学生だった妹の世代が対象だった。 同年春ごろ、同窓生の間で「同校の全生徒にドリキャスが配られるらしい」という噂がにわかに流れだした。その後の経過は覚えてないが、噂がほぼ確実となって、ゲーマーとしてはまさに棚からぼた餅状態。当時は「なんでうちの中学校が!?」と思ったのだが、今にしてみればIT教育推進モデル校のような指定を受けていたのだろう。自分の在校時にも、視聴覚室が突如リニューアルされi386な黒TownsからPentium II 266MHzな最新鋭FMV+ネットへの常時接続(恐らくISDN)&LAN環境が導入され、時の内閣総理大臣橋本龍太郎氏とビデオチャットするなんてイベントが催されたっけ。(余談だけど、同学年に総理と同性同名のヤツがいて橋龍と橋竜の奇跡の対談だー!とかバカなことを言ってた。) ドリキャスが配布されたのは確か夏前で、もしかすると夏休みに入るタイミング。保護者説明会から戻ってきた親の手には * ドリームキャスト本体 * ドリームキャストキーボード * スクールネット・エクスペリメンタル * isao.netアカウント情報 が入った大きな紙袋が…!スクールネットへの接続もそこそこに、待ちに待ったサクラ大戦専用機化したのは言うまでもない。夏休み中は笑っていいともを見てからのサクラ大戦三昧の日々だった。 肝心のスクールネット・エクスペリメンタルの方はと言うと、ソフトの中身は恐らくドリームパスポートのカスタム版で、何度かお知らせメールが来たり、BBSへの掲載があった程度だったと思う。お世辞にも活用されていたとは言えない。当時のネット事情を考えれば、それもやむ無しというか成るべくして成ったというか…。 当時の一般家庭のIT環境といえば、PCがアーリーアダプタの域を抜けようやく1家に1台になろうとしていた時代だ。地方都市にもADSLが普及し始め、古くからのネットユーザーはテレホタイムからの開放・常時接続・高速性に狂喜乱舞する一方で、世間的にはインターネット?なんじゃそりゃ?という時代である。検索エンジンはディレクトリ型のYahoo、ロボット型のInfoseek、/-ぁゃιぃ-/海外サイトならAltaVistaを使い分け、ときにはFTP検索も駆使し、Googleなるものが凄いらしいと評判になっていた。 こんな感じであるからして、PCより簡単とはいえ、DCでのネット接続もそれなりにハードルが高かった。自発的にスクールネットへダイヤルアップ接続し情報を取得しなきゃならないんだから、保護者世代には難しかったであろうことは想像に難くない。家庭へのサポート部隊の派遣があったわけでもないので、一度もスクールネットに繋ぐことなく、ただのゲーム機化した家庭も少なくないと思う(下手すりゃ売られて買い取り代金が親の懐に入った可能性も…) かく言ううちでも使うのは自分だけ。今だから言えるけど、isao.netのアカウントもPCでネットするのに使ってた笑。 そんなこんなで、実証実験は知らぬ間に終わり(なんか学校からプリントが来たような…スクールネット上でも告知があったような……)、晴れてドリキャス一式が自分のゲームコレクションに加わったのだった。 その後、今はなきGAMES'ARKでVGAデミロを購入し、美麗な出力でサクラ大戦2~4を遊び、クレイジータクシーで笑い転げ、連ジとJET SET RADIOにドハマりしてた。連ジはPS2版よりジャギーが少なくてキレイだったなぁ(遠い目。MIL-CDやネオジオポケットの通信ケーブルを使ったアレやコレやからのブロードバンドアダプタ購入など、ドリキャスでは一通り遊ばせてもらったし、本当にいい思い出。 ありがとう、スクールネット・エクスペリメンタル…! ===== 関連情報 ===== * [[https://ci.nii.ac.jp/naid/10008747187|CiNii 論文 - インターネットでつなぐ家庭と学校 : スクールネットエクスペリメンタルにおける教育実践]] * [[https://ascii.jp/elem/000/000/308/308567/index.html|ASCII.jp:『ドリームキャスト』で家庭と学校を結ぶ大規模実験、いよいよ4月から開始――“スクールネットEシンポジウム2000”より(前編)]] * [[https://internet.watch.impress.co.jp/www/article/1999/0928/ascii.htm|学校や家庭のインターネット接続の普及を目指す協議会が発足 (Internet Watch)]] * [[https://www.kknews.co.jp/maruti/m0009nb.htm|インターネットを活用して10校が交流中 (教育家庭新聞2000年9月2日号)]] * > 実験校は次の通り。享栄学園鈴鹿中学校(三重県)▽広池学園麗澤瑞浪中学校(岐阜県)▽兵庫県福崎町立福崎小学校▽東京都渋谷区立中幡小学校▽長野県佐久市立佐久城山小学校▽福島県会津若松市立第三中学校▽兵庫県加古川市立氷丘中学校▽静岡県浜北市立養護学校▽静岡県浜北市立大平小学校▽新潟県赤泊村立川茂小学校