2005年06月21日
弱い犬程よく吠える
エイベックスネットワークは20日、同社が進めている高音質プロジェクト「Super Sound Creation」の一環として、高音質の研究におけるエグゼクティブアドバイザーとして音楽プロデューサー兼ミュージシャンの小室哲哉氏を招き、高音質研究の成果と「HD Sound Laboratory」の設立趣旨を発表した。
エイベックスさん、こういうことは、現行の16bit/44.1KHzのフォーマットを使いこなしてから言おうね。記事中で小室氏も言ってますが、理論的には音質の変化は無いとは言う物の、音が悪いと言われているCCCDを平気で出すような会社が、音質云々を言っても全く説得力が無い訳でして。
高音質と一口に言っても、何を持って「音がいい」とするのかは非常に難しい問題です。絶対的な基準が存在せず、定義が曖昧だからです。しかし、技術的な側面から、ある種の指針を出すことは可能です。AMラジオよりもFMラジオの方が高音質であることは誰しもが認めるでしょう。同様に理論的には16bit/44.1KHzよりも、24bit/192KHzでサンプリングされた音の方がいい筈です。
ですが、これらはあくまでも、音質を語る上での一つの要素に過ぎません。サンプリング周波数というのは、料理に例えてみれば、素材一つ一つの品質です。素材一つ一つの品質がよくても調理がしっかりとしていなければ、素材の持ち味を出すことができないのは想像に難く有りません。逆に言えば、それなりの素材でもちゃんと調理してあげれば、素晴らしい料理に仕上がります。このいい例が、以前に紹介したCOWBOY BEBOPのCDです。
つまり、何が言いたいかというと、素材を活かすも殺すもマスタリング(調理)次第、ということです。例え24bit/192KHzで収録したとしても、その後のマスタリングがヘタレならば、最終的な音は、とても高音質とは呼べる代物ではないということです。
少なくとも、今のエイベックスにはそれだけのマスタリング技術はないと思います。何でもかんでもダイナミクスを掛けりゃいいってもんじゃありません。
私が思うに、次世代オーディオと言った類いのものは、レーベル会社と対応機器製造会社の両方がよほどのキャンペーンでもしない限り、普及しないと思います。CDが破竹の勢いでレコードを駆逐できたのは、レコードに比べて有り余る魅力があったからです。
- 直径12cmという収納に便利な大きさ
- それでいて、収録時間は74分という長時間
- スクラッチノイズが出ない
- 手軽に高音質が楽しめる
- 頭出しが楽
- 「デジタル」という、何だか未来を感じさせるキーワード などなど…
それに比べて現状の次世代オーディオは、CDの延長線上の物体に過ぎません。サンプリング周波数が幾ら高くたって、ダイナミックレンジが広くたって、大半の人にはCDとの音の違いなんぞ分かって貰えないでしょう。ましてや、悲しいかな、私を含めMDやMP3などの不可逆圧縮の音で満足できる人が大半なのが実情です。
※ダイナミクスを掛けりゃいい…音楽には抑揚がありますが、その抑揚をノーマライザやコンプレッサを使って、一定の音圧に抑え込むこと。音量の変化が少なくなり耳辺りはよくなるが、ごちゃごちゃとした抑揚の無い、面白みに欠ける音になってしまう。つまり、最近のJ-POP系のCDに多い手法。これじゃ、音量に65536段階の分解能があったって、全く意味無し。こんな状態で次世代オーディオを語られてもねぇ。